ソーシャルブレインズ(社会脳)が成長した証
ADHDと診断され、薬を飲み続けている子の保護者と来年度の向けて引継ぎをした。
体が大きくなったり、成長しているなどの理由で、薬があわなくなっている傾向が見られる。学校での様子を話し、家庭での様子もお聞きして、春休み中に一度診断を受けた岡山の病院に行って、再検査をしてみるようにお奨めした。
保護者もそういった意向を持っていたようだったが、どうも、踏ん切りがつかなかったようである。が、私が話した学校内での様子を聞いて、この時期に行ってみようということになった。
その子が日記に次のようにびっしりと書いていた。書くのが苦手なので、いつもは大きな字で5,6行くらいしか書かなかったが・・・。
「1年間をふりまえって。ぼくは3年生1年間で、いちばんうれしかったことは、友だちができたことが一番うれしかったです。
学校でドール遊びをしたり、おにごっこをしたり、いろいろなことをして、遊んだりしました。でも、たまにけんかがあるときもあります。でも、なかなおりしたら、また遊べるから遊ぶときは楽しいです。だから、今の友だちは進級しても友だちでいたいです。」
私はこの日記の「でも、なかなおりしたらまた遊べるから遊ぶときは楽しいです。」という1文に、この子の成長をみた。それは、百人一首を続けることで、「負けを認める」ことに共通するものがある。
彼にとって、友達とコミュニケーションをとることは、大の苦手であった。大人とはうまくとれるが、子ども同士でうまくいかない。トラブルがあり、すぐにその場を離れる。ちょっかいを出す。こういったことの繰り返しであった。
ところが、2学期の中ごろから、トラブルがあっても逃げなくなってきた。喧嘩をしても、その場に残るようになってきた。
ソーシャルブレインズ。社会脳ともいう。
ソーシャルブレインズは、社会環境の変化に応じて適切に行動するための脳機能である。それは生まれたときから少しずつ身につけていくものである。発達障害の子どもたちはこういったことが苦手である。
しかし、彼が社会脳を成長させたのはまぎれもない事実である。表面的にみれば、みんなと遊ぶことを繰り返したからと言える。
しかし、何らかの働きかけが効果的だったとも言える。最初の頃、トラブルがあると、いつも職員室に私を探しに来ていた彼の姿はなくなった。
どういった働きかけが彼の社会脳を成長させるのに意味があったのか。これを学級経営との関係で分析してみると、何かがみえてくるかもしれない。